神奈川県の生物多様性ホットスポット選定概要

2015年8月 NPO法人 神奈川県自然保護協会
                              (文責:村上雄秀)

はじめに

 神奈川県内には多くの希少生物種がみられます。これらの希少種は県内に均質に分布しているわけではなく、ある森や草原、水辺や水中などに集中して生育・生息している場合が多いものです。このような希少種や保全すべき種が集中して生育・生息する場所を(生物多様性)ホットスポットといって、世界では国際NGOコンサベーションインターナショナルから日本とその周辺海域が認定されています
(http://www.conservation.org/global/japan/priority_areas/hotspots/Pages/overview.aspx)。
また、国内における「ホットスポット」はKBAという名前で選定されており、神奈川県では丹沢、箱根、三浦半島が指定されています(http://kba.conservation.or.jp)。
 神奈川県自然保護協会ではこのホットスポット、KBAの神奈川県版を作るプロジェクトを2012年にスタートさせました。3年間の時間をかけ、本年2015年春にその最終版が完成しましたのでここに紹介いたします。

特徴

本ホットスポットリストの特徴は以下の4点です。

  • 客観的(科学性)かつ、きめ細かなホットスポットの選定(網羅性):既に県内で指定されているレッドリスト(RL)種に基づき、客観的な評価に勤めると共に、アンケートや選定メンバーのフィールドワークに基づく希少種の生育・生息地を網羅的にリストアップしました。
  • 開発行為などへの抑制を含む、県内の生物多様性の保全のための選定(目的性) :このプロジェクトは学問的な成果を得るためではなく、あくまで県内の良好な自然及び生物多様性の保全・保護を目的としており、これを公開することにより開発などによる生物多様性の喪失を防止することをねらいとしています。
  • 地域性の評価の実現(多層性) :神奈川県は西部に丹沢、箱根の良質な生態系を有し、東部では多くが市街化され緑は失われてきた傾向にあります。従ってどの地域のホットスポットも同一の基準で選出するのではなく、地域の実情に即して周辺環境から見て相対的に重要な地域を細かな評価で選定しました。
  • 市民視線からの柔軟な評価(市民密着型) :広くアンケートを募集し、地域で保護活動を続けている市民やNPOによる地域の情報を基に選定メンバーが吟味し、評価しています。市民視線の自然評価を尊重しています。


経過

このプロジェクトは以下のように進めました。選定メンバーのミーティングは10回以上に達しました。
2012年春 ホットスポット選定メンバーへの依頼
植物・植生・哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類・海域魚類・陸域魚類・昆虫
2012年夏 約150の県内NPO・研究機関・博物館・自然愛好家などに調査用紙を配布
2012年秋 配布した調査用紙を受領(最終的には70件 53ヶ所)
2013年春~2014年冬 審査・選定・確認作業
2015年春 第1次最終リストとりまとめ

基準

選定基準は以下の2つのカテゴリーに拠っています。カテゴリーBはレッドリストなどからは抽出できないが、地域の生物多様性の保全上重要な地域として評価を行える内容としています。

カテゴリーA:希少種、RL種などが集中して産する地域(重み付け;県西・県東などの広域区分を加味)(特殊性)
カテゴリーB「機能的ホットスポット」:カテゴリーA以外で神奈川県や地域の生物多様性の保全 上、特に重要な地域(典型性)
1.県内に少ないサギ類の集団営巣地や魚類の産卵場など、生息上の重要地域
2.典型的な生物相や相観を有する生態系
3.周辺環境からみて相対的に希少な生態系

選考メンバー

選定作業は以下の方々の全面的な協力により、無償で進められました。いずれも県内の生物に関する第1線の研究者です(敬称略)。

植物: 勝山輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館)
  田中徳久(神奈川県立生命の星・地球博物館)
植生: 村上雄秀(IGES国際生態学センター)
昆虫: 高桑正敏(元神奈川県立生命の星・地球博物館)
鳥類: 石井 隆(日本野鳥の会)
哺乳類 山口喜盛(元丹沢湖ビジターセンター)
陸域魚類: 勝呂尚之
海域魚類: 林 公義(元横須賀市自然・人文博物館)
両生類・爬虫類:天白牧夫(日本大学)
全般・監修 青砥航次(神奈川県自然保護協会)

ホットスポット一覧「神奈川県生物多様性ホットスポット2015」のダウンロードはこちらから